二枚舌外交 元外務官僚「日本の国際的信用損なう」
聞きなれない「国連特別報告者」という言葉が世論を賑わしている。
今朝の東京新聞一面に「国連特別報告者 秘密法の改正勧告」「情報開示の拡大求める」との見出しで、国連人権高等弁務官事務所が30日、言論と表現の自由に関するデビット・ケイ特別報告者がまとめた対日調査報告書を公表したことを伝えている。
ケイ氏は、日本の報道が特定秘密保護法などで委縮している可能性に言及、メディアの独立性に懸念を示し、日本政府に対し、特定秘密保護法の改正と、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法第4条の廃止を勧告したと記事は伝えている。
◇「二重基準」の政府対応 拉致担当には受勲
安倍首相は共謀罪が「人権、プライバシー侵害」に当たると懸念を示した国連特別報告者ケナタッチ氏への批判を強めている。同じ特別報告者でも、北朝鮮による日本人拉致問題に取り組んだマルキズ・ダルスマン氏には先月、旭日重光章を授与している。野党からは、ダブルスタンダード(二重基準)との批判の声も上がる。
27日にイタリアで行われた安倍首相とグてレス国連事務総長との会談。会談後、政府は共謀罪法案に懸念を示した国連特別報告者の報告や慰安婦問題の日韓合意をめぐる事務総長の発言を公表したが、この内容に国連側が異議を唱えている。国連は翌日、異例のプレスリリースを発表し、事実上、日本側の発表を否定した。
元外務官僚で外交評論家の天木直人氏は、東京新聞の取材に「国連がウソをつく理由はなく、政府が捻じ曲げて解釈、発表したと考えざるを得ない。日韓合意は安倍政権にとっても最も重要なテーマの一つ。共謀罪法案は国内的に反発が強く、法案通過の正念場。それらを乗り切るために、都合の悪いことを都合のいいように発表しているとしか思えない。問題はこうしたことが、日本の国際的信用を著しく損なわせることだ」と厳しく警鐘を鳴らす。